公益財団法人特殊無機材料研究所

平成28年度事業報告書

平成28年4月1日~平成29年3月31日

 

 炭化ケイ素繊維は、1975年東北大学金属材料研究所の矢島聖使教授とその研究室メンバーにより、ポリカルボシランを溶融紡糸後焼成するプロセス(Yajima Process)により世界で初めて作成され、その後、宇部興産(株)ならびに日本カーボン(株)において成功裡に商品化されている。最近、欧米では、次世代航空機ジェット・エンジンに不可欠の基幹高温材料として、炭化ケイ素繊維がgame-changing technologyあるいはcutting edge next generation technologyに位置づけられて注目を集めている。

 航空機産業は、今後少なくとも20年間は年率5%以上の成長が見込まれる最も有望なハイテク分野である。特に、グローバル・マーケットの主要部分を占めつつある民間航空機においては、エンジンの安全化、軽量化、高温動作化、低燃料消費化、環境汚染ガス排出低減化、メインテナンス軽減化等が必須の高度化対策と目されている。これらの高度化ニーズを満たすには、エンジン構成材料を従来のニッケル系超合金から炭化ケイ素繊維強化炭化ケイ素マトリックス複合体に切り替える大変革が必要であると考えられている。

 このような社会経済的ならびに技術的背景を踏まえて、「既存の炭化ケイ素繊維の安定供給・大量生産技術の確立」そして「炭化ケイ素繊維のさらなる高性能化」を2本柱とするNEDOプロジェクト「軽量耐熱複合材CMC技術開発」が宇部興産(株)を主幹会社として平成27年7月から5年計画でスタートしている。当財団は、平成28年度においては、このNEDOプロジェクトと連携して、「炭化ケイ素繊維のさらなる高性能化に関する基礎的研究開発」ならびに「炭化ケイ素繊維の性能と製造技術に関する国際標準の設定」を事業活動として展開し、併せて関連分野における「研究会等の開催による成果公開、情報交換そして研究促進」を目的としてセミナー、ワークショップならびに研究会を精力的に開催している。

1.炭化ケイ素繊維ならびにその複合成形体の高性能化に関する研究開発
 特定費用準備資金の一部を取り崩し、炭化ケイ素繊維ならびにその複合成形体の高性能化に関する下記の6テーマの基礎的研究を行っている。(  )は共同研究機関である。

・前駆体有機ポリマーの合成ならびに構造解析   (群馬大学)
・紡糸・不融化・焼成プロセスにおける化学結合の変化   (大阪府立大学)
・焼成・無機化におけるナノ組織構造の解析   (日本原子力研究開発機構)
・単繊維のアモルファス→結晶相転移と組織制御   (東京大学)
・有機ポリマー・ルートによるSi-C系ナノ粒子   (愛媛大学)
・炭化ケイ素繊維/マトリックス複合体   (東京工業大学)

 グローバル・マーケットは炭化ケイ素繊維による次世代航空機ジェット・エンジンの本格的実用化を2030年と設定しているので、炭化ケイ素繊維とその複合体の抜本的高度化を目指す基礎的研究開発が今後10数年にわたる熾烈な国際競争となるのは必然である。上記の6研究テーマはこの国際的研究競争に打ち勝つためには避けて通れない課題であり、かつ日本の大学・研究機関の中にこれらの基礎的研究を行う拠点を形成し、人材育成を図らなければならない。このような視点に立脚して、公益財団法人特殊無機材料研究所は研究事活動事業を鋭意選択・集中して展開している。

2.炭化ケイ素繊維ならびに複合成形体の国際標準規格設定に関する活動
 炭化ケイ素繊維は世界に先駆けて日本において最初に開発され、工業製品化された正に日本発のオリジナル材料である。最近、宇宙・航空産業を中心として欧米ならびに中国において炭化ケイ素繊維への注目が急速に高まりつつあり、健全なグロ-バル・マーケットの形成が強く求められている。そのために、炭化ケイ素繊維の製法、構造、強度・耐熱性等の諸性質に関する規格を国際的に標準化して、公正かつ透明な競争と選択を可能にしなければならない。公益財団法人特殊無機材料研究所は、創設期からフロント・ランナーとして炭化ケイ素繊維の研究開発に深く携わっており、国際標準規格設定を主導する最適任者として広い視野に立脚して本活動を展開している。本年度は、ファインセラミック協会と共同して、樹脂含浸炭化ケイ素繊維束の機械的強度評価に関する国際標準規格の設定作業を強力に進行している。

3.研究会等の開催による成果公開、情報交換そして研究促進
 (1)セミナーAIMS-2016
 平成28年5月25日(水)13:45~15:00
 学士会館、301号室
 和久 芳春(東北大学大学院工学研究科 客員教授)  
 「耐熱材料へのセラミックスの挑戦」

 (2)PD-SiCs研究会
    第1回 平成28年 7 月 21 日 (木) 13:30~16:30
        大阪府立大学I-siteなんば」S1室(2F)
        ・高木 俊(イビデン株式会社)
        「黒鉛材料の紹介、SiC/SiC複合材料開発」
        ・成澤 雅紀(大阪府立大学) 
        「CIMTEC2016(イタリア ペルージャ)における研究発表
        (題目”Silicon Oxycarbides with Transparency and
         Photoluminescence”)、およびトレント大学、G. D. Soraru
        教授研究室紹介」
        ・山岡 裕幸(宇部興産株式会社)
        「アメリカセラミックス協会主催のICACC-2016における発表、
        およびCMCに関する報告」 
        ・津田 大(大阪府立大学)
        「各種金属を用いたチラノヘックスの拡散接合と界面の透過
        電子顕微鏡観察」

    第2回 平成28年10月12日(水) 13:30~16:30
        株式会社超高温材料研究センター(JUTEM)山口事業所
        ・細野 和也(JUTEM 山口事業所)
        「光加熱法による高温セラミック材料の熱拡散率測定」 
        ・杉浦 幸彦(JUTEM 岐阜事業所)
        「高温材料評価を支援する事業について」
        ・治田 慎輔(宇部興産株式会社)
        「高純度窒化ケイ素粉末の特性と用途
        ・JUTEM 山口事業所 見学

    第3回 平成29年1 月19日(木) 13:30~16:30
        東工大田町キャンパス・イノベーション・センター多目的室
        ・林 謙一(日本曹達株式会社)
        「パージメチルシラン(PDMS)の紹介」
        ・北 憲一郎(国立研究開発法人産業技術総合研究所)
        「有機ケイ素系ポリマーの活用によるアルミニウムと
        セラミックスの接合法」
        ・吉田 克己(東京工業大学科学技術創成研究院)
        「SiC系セラミックスの中性子照射損傷」
        ・須山 章子(株式会社 東芝)
        「軽水炉事故耐性SiC炉心材料の開発」

    第4回 平成29年6月1日(木)15:40~16:15
        学士会館、301号室
        ・佐藤 光彦(東京工科大学)
        「SiC繊維の視点からの複合材料の開発とCMCセンター
        における今後の取組」

 (3)AIMSワークショップ2016:炭化ケイ素繊維・複合体高度化プロジェクト
   平成28年8月4日(木)13:00~5日(金)13:00
   公益財団法人特殊無機材料研究所会議室
   4日(木)
   ・鈴木謙爾(AIMS代表理事)
   「開会挨拶(趣旨説明)」
   ・市川 宏(AIMS理事)
   「炭化ケイ素繊維の現状と課題」
   ・鈴谷 賢太郎(日本原子力研究開発機構J-PARCセンター研究主幹)
   「ポリカルボシランからSiCへの熱分解過程」
   ・篠原 佑也(東京大学大学院新領域創成科学研究科助教)
   「マイクロビームX線小角散乱法を用いたSiC単繊維の構造解析」
   ・成澤 雅紀(大阪府立大学大学院工学研究科准教授)
   「炭化ケイ素繊維および酸素含有炭化ケイ素繊維の構造評価と
   新機能探索への試み」
   5日(金)
   ・吉田 克己 (東京工業大学科学技術創研究院先導原子力研究所准教授)
   「電気化学プロセスを用いたSiCf/SiCm複合材料の界面層形成
   プロセスの開発」
   ・山室 佐益 (愛媛大学大学院理工学研究科准教授)
   「炭化ケイ素複合体の作製に向けて
   -ナノ粒子プロセスおよびマイクロ波加熱からのアプローチ-」
   ・久新 荘一郎(群馬大学大学院理工学研究府教授)
   「ポリカルボシランの構造解析、構造制御、高純度化」

4.理事会
 第1回 平成28年4月25日(月)14:00-18:00
     公益財団法人特殊無機材料研究所 会議室
     ・平成27年度事業報告書案ならびに収支決算書案の審議・承認
     ・平成27年度事業ならびに決算の監査結果の報告・承認
     ・平成28年度定時評議員会の開催について
     ・定例セミナーAIMS-2016の開催について
     ・炭化ケイ素繊維高度化プロジェクト
     ・炭化ケイ素繊維ならびにその複合体の国際標準化作業について
     ・公益財団法人特殊無機材料研究所の将来計画について
 第2回 平成28年7月5日(火)11:00-14:00
     宇部興産株式会社東京本社 会議室
     ・炭化ケイ素繊維高度化プロイジェクト
     ・炭化ケイ素繊維国際標準
     ・PD-SiCs研究会
     ・将来計画検討委員会
 第3回 平成28年10月18日(火)18:00-20:00
     ANAクラウンプラザホテル宇部 会議室
     ・代表理事の業務執行状況の報告
     ・業務執行理事の業務執行状況の報告
     ・炭化ケイ素繊維国際標準
     ・将来計画
     ・炭化ケイ素繊維高度化プロジェクト
 第4回 平成29年1月19日(木)12:00-13:30
     東工大田町キャンパス・イノベーション・センター 会議室
     ・平成29年度事業計画の審議ならびに承認
     ・平成29年度収支予算の審議ならびに承認
     ・炭化ケイ素繊維高度化プロジェクトについて
     ・炭化ケイ素繊維国際標準の設定について
     ・PD-SiCs研究会について
     ・公益財団法人特殊無機材料研究所の将来計画
     ・平成29年度定時評議員会の開催について

5.定時評議員会
  平成28年5月25日(水)11:00-14:00
  学士会館、2階、301室
  ・平成27年度事業報告ならびに決算報告の審議・承認
  ・平成27年度事業ならびに決算監査報告の審議・承認
  ・平成28年度事業計画ならびに収支予算の報告・承認

6.事業報告の附属明細書
 平成28年度事業報告には、事業報告の内容を補足する重要な事項が存在しないので、附属明細書を作成しない。