公益財団法人特殊無機材料研究所

平成30年度事業報告書

平成30年4月1日~平成31年3月31日

 

  航空機産業は、今後少なくとも20年間は年率5%以上の成長が見込まれる最も有望なハイテク分野である。特に、グローバル・マーケットの主要部分を占めつつある民間航空機においては、エンジンの安全化、軽量化、高温動作化、低燃料消費化、環境汚染ガス排出低減化、メインテナンス軽減化等が必須の高度化対策と目されている。これらの高度化ニーズを満たすには、エンジン構成材料を従来のニッケル系超合金から炭化ケイ素繊維強化炭化ケイ素マトリックス複合体に切り替える大変革が必要であると考えられている。

 このような社会経済的ならびに技術的背景を踏まえて、「既存の炭化ケイ素繊維の安定供給・大量生産技術の確立」そして「炭化ケイ素繊維のさらなる高性能化」を2本柱とするNEDOプロジェクト「軽量耐熱複合材CMC技術開発」が宇部興産(株)を主幹会社として平成27年7月から5年計画でスタートしている。当財団は、平成30年度においては、このNEDOプロジェクトと連携して、「炭化ケイ素繊維のさらなる高性能化に関する基礎的研究開発」ならびに「炭化ケイ素繊維の性能と製造技術に関する国際標準の設定」を事業活動として展開し、併せて関連分野における「研究会等の開催による成果公開、情報交換そして研究促進」を目的としてセミナー、ワークショップならびに研究会を精力的に開催した。

1.炭化ケイ素繊維ならびにその複合成形体の高性能化に関する研究開発
 特定費用準備資金の一部を取り崩し、炭化ケイ素繊維ならびにその複合成形体の高性能化に関する下記の4テーマの基礎的研究を昨年に引き続き実施した。(  )は共同研究機関である。

 

・紡糸・不融化・焼成における化学結合の局所変化   (大阪府立大学)
・焼成・無機化におけるナノ組織構造の解析   (日本原子力研究開発機構)
・有機ポリマー・ルートによるSi-C系ナノ粒子の形成   (愛媛大学)
・炭化ケイ素繊維/マトリックス複合体の微細組織    (東京工業大学)

 グローバル・マーケットは炭化ケイ素繊維による次世代航空機ジェット・エンジンの本格的実用化を2030年と設定しているので、炭化ケイ素繊維とその複合体の抜本的高度化を目指す基礎的研究開発が今後10数年にわたる熾烈な国際競争となるのは必然である。上記の4研究テーマはこの国際的研究競争に打ち勝つためには避けて通れない課題であり、かつ日本の大学・研究機関の中にこれらの基礎的研究を行う拠点を形成し、人材育成を図らなければならない。このような視点に立脚して、公益財団法人特殊無機材料研究所は研究事活動事業を鋭意選択・集中して展開している。

2.炭化ケイ素繊維ならびに複合成形体の国際標準規格設定に関する活動
 炭化ケイ素繊維は世界に先駆けて日本において最初に開発され、工業製品化された正に日本発のオリジナル材料である。最近、宇宙・航空産業を中心として欧米ならびに中国において炭化ケイ素繊維への注目が急速に高まりつつあり、健全なグロ-バル・マーケットの形成が強く求められている。そのために、炭化ケイ素繊維の製法、構造、強度・耐熱性等の諸性質に関する規格を国際的に標準化して、公正かつ透明な競争と選択を可能にしなければならない。公益財団法人特殊無機材料研究所は、創設期からフロント・ランナーとして炭化ケイ素繊維の研究開発に深く携わっており、国際標準規格設定を主導する最適任者として広い視野に立脚して本活動を展開している。平成30年度は、炭化ケイ素繊維特性のラウンドロビンテストの結果をまとめ、「CMC強化繊維の試験方法:樹脂含浸ヤーンの引張特性の決定」原案をISOに提出し受理された。

3.研究会等の開催による成果公開、情報交換そして研究促進
    (1)セミナーAIMS-2018
        平成30年6月4日(木)14:00~15:00
        学士会館
        ・石川 隆司(名古屋大学ナショナルコンポジットセンター特任教授)
         「JAXA における繊維強化セラミックス(CMC) の最新の研究の紹介と 
         名古屋大学ナショナルコンポジットセンターにおける自動車への
         CFRTP適用プロジェクトの紹介」

    (2)平成29年度第4回PD-SiCs研究会
        平成30年6月4日(金)15:40~16:15
        学士会館
        ・鈴谷 賢太郎(日本原子力研究機構J-PARCセンター研究主幹)
        「ポリカルボシランの熱分解過程における、高エネルギーX線回折
         によるアトミックスケールの可視化」

    (3)「高信頼性・高耐熱先進材料」講演会
        平成30年10月26日(金)13:20~16:00
        株式会社超高温材料研究センター(JUTEM)山口事業所
        ・中川 成人(株式会社超高温材料研究センター代表取締役社長)
        「高信頼性・高耐熱先進材料の研究開発について」
        ・谷本 敏夫(株式会社湘南先端材料研究所代表 湘南工科大学名誉教授)
        「Multifunctional Compositesの創製」
         -機械加工性に優れた高強度・高靭性CMCと制振性CFRP-
        ・石川 敏弘(山口東京理科大学教授)
        「結晶質炭化ケイ素繊維の微細構造制御並びに表面平滑性について」

    (4)炭化ケイ素繊維・複合体高度化プロジェクト・ワークショップ2018
        平成29年12月25日(月)13:00~17:00
        学士会館
        ・鈴谷 賢太郎(日本原子力研究開発機構J-PARCセンター研究主幹)
        「低酸素SiC繊維の電子状態計算」
        ・成澤 雅紀(大阪府立大学工学研究科準教授)
        「超耐熱性炭化ケイ素繊維におけるアルミ周辺環境の分光学的評価」
        ・山室 佐益(愛媛大学大学院理工学研究科準教授)
        「コロイド状ポリカルボシランの液相合成とその有機-無機変換
         によるSiC化に関する研究」
        ・吉田 克己(東京工業大学科学技術創成研究院先導原子力研究所准教授)
        「炭化ケイ素セラミックスの微構造に及ぼすアルミニウム、ホウ素
         及び炭素の添加効果に関する研究」

        ・鈴木 謙爾(公益財団法人特殊無機材料研究所代表理事)
         司会「総合討論」

4.理事会
    第1回 平成30年5月8日(火)13:00-15:00
        学士会館
        ・平成29年度事業報告書案の審議ならびに承認
        ・平成29年度収支決算報告書案の審議ならびに承認
        ・平成29年度監査報告書の承認
        ・平成30年度定時評議員会の開催
        ・金融資産運用規程の制定

    第2回 平成30年10月2日(火)09:00-16:30
        公益財団法人特殊無機材料研究所
        ・代表理事の業務報告
        ・業務執行理事の業務報告
        ・保存資料の選別と処理(現物保管、電子化保管、廃棄)について
        ・2019年度事業計画について
        ・次期役員候補者(評議員選定委員、評議員、監事、理事)について
        ・(株)国際文献社への事務的業務のアウトソーシングについて
        ・国際標準作成事業について

    第3回 平成31年3月6日(水)13:00-15:00
        公益財団法人特殊無機材料研究所
        ・2019年度事業計画書の審議ならびに承認
        ・2019年度収支決算書の審議ならびに承認
        ・評議員選定委員会の報告ならびに承認
        ・代表理事の業務執行状況の報告
        ・業務執行理事の業務執行状況の報告

5.定時評議員会
    平成30年6月4日(月)11:00-13:30
        学士会館
        ・平成29年度事業報告ならびに決算報告の審議・承認
        ・平成29年度事業ならびに決算監査報告の審議・承認
        ・平成30年度事業計画ならびに収支予算の報告・承認
        ・新体制について

6.事業報告の附属明細書
    平成30年度事業報告には、事業報告の内容を補足する重要な事項
    が存在しないので、附属明細書を作成しない。