公益財団法人特殊無機材料研究所

2020年度事業報告書

2020年4月1日―2021年3月31日

 

炭化ケイ素繊維は、1975年東北大学金属材料研究所の矢島聖使教授とその研究室メンバーにより、出発物質のポリシランから合成される中間生成物のポリカルボシランを溶融紡糸した後、熱酸化不融化工程、焼成工程のプロセス(Yajima Process)により世界で初めて連続繊維として開発され、日本カーボン(株)において「ニカロン」の商品名の繊維として製造販売された。その後、不融化工程が改良され電子線照射架橋反応による不融化工程が開発され、超高温(1500℃以上)においてより優れた特性の繊維が「ハイニカロン-タイプS」の商品名においてNGSアドバンストファイバー(株)から「ニカロン」と共に、現在、製造・販売されている。一方、ポリシランにチタン or ジルコニウム or アルミニウムなどの金属アルコキシドとの反応により得られる、それぞれの中間生成物、ポリメタロカルボシラン、を溶融紡糸-熱酸化不融化工程-焼成工程によりそれぞれの金属を含む炭化ケイ素系繊維が宇部興産(株)において開発され、現在、それぞれ、チラノ繊維LoxM、チラノ繊維ZMI、チラノ繊維SAの商品名において製造・販売されている。最近、欧米では、次世代航空機ジェット・エンジンに不可欠の基幹高温材料として炭化ケイ素繊維強化炭化ケイ素マトリックス複合材料が注目されているが、その強化繊維として炭化ケイ素繊維がgame-changing technologyあるいはcutting edge next generation technologyに位置づけられている。航空機産業は、今後少なくとも20年間は年率5%以上の成長が見込まれる最も有望なハイテク分野である。特に、グローバル・マーケットの主要部分を占めつつある民間航空機においては、エンジンの安全化、軽量化、高温動作化、低燃料消費化、環境汚染ガス排出低減化、メインテナンス軽減化等が必須の高度化対策と目されている。これらの高度化ニーズを満たすには、エンジン構成材料を従来のニッケル系超合金から炭化ケイ素繊維強化炭化ケイ素マトリックス複合体に切り替える大変革が必要であると考えられている。このような社会経済的ならびに技術的背景を踏まえて、「既存の炭化ケイ素繊維の安定供給・大量生産技術の確立」そして「炭化ケイ素繊維のさらなる高性能化」を2本柱とするNEDOプロジェクト「軽量耐熱複合材CMC技術開発」が宇部興産(株)を主幹会社として2015年7月から5年計画でスタートしている。本財団は、2019年度において、このNEDOプロジェクトと連携して、「炭化ケイ素繊維のさらなる高性能化に関する基礎的研究開発」ならびに「炭化ケイ素繊維の性能と製造技術に関する国際標準の設定」を事業活動として展開し、併せて関連分野における「研究会等の開催による成果公開、情報交換そして研究促進」を目的としてセミナー、ワークショップならびに研究会を精力的に開催している。

1.炭化ケイ素繊維ならびにその複合成形体の高性能化に関する研究開発
特定費用準備金の一部を取り崩し、炭化ケイ素繊維ならびにその複合成形体の高性能化
に関する下記の4テーマの基礎的研究について2018年度まで行われ、2019年度は、それらの研究成果の総括が行われた。( )は共同研究機関である。
そして、2020年度に小冊子にまとめられた。

(1)紡糸・不融化・焼成における化学結合の局所変化    (大阪府立大学)
(2)焼成・無機化におけるナノ組織構造の解析  (日本原子力研究開発機構)
(3)有機ポリマー・ルートによるSi-C系ナノ粒子の形成    (愛媛大学)
(4)炭化ケイ素繊維/マトリックス複合体の微細組織    (東京工業大学)
 
グローバル・マーケットは炭化ケイ素繊維による次世代航空機ジェット・エンジンの本格的実用化を2030年と設定しているので、炭化ケイ素繊維とその複合体の抜本的高度化を目指す基礎的研究開発が今後10数年にわたる熾烈な国際競争となるのは必然である。上記の4研究テーマはこの国際的研究競争に打ち勝つためには避けて通れない課題であり、かつ日本の大学・研究機関の中にこれらの基礎的研究を行う拠点を形成し、人材育成を図らなければならない。このような視点に立脚して、公益財団法人特殊無機材料研究所(AIMS)は研究活動事業を鋭意選択・集中して展開している。特に、強化繊維の安定供給と高性能化は重要である。宇部興産(株)おいて製造されている、ポリシランとアルミニウムアルコキシドから合成されるポリアルミノカルボシランを溶融紡糸そして、熱酸化不融化工程-焼成工程により製造される商品名、チラノ繊維SAは、強化繊維として特に期待されている。本繊維は炭化ケイ素微結晶を主成分として少量のアルミニウムなどが含まれている。したがって、繊維中のケイ素、炭素、アルミニウムなどの結合状態は繊維の特性と密接に関連している。2019年度は、上記4テーマの中において、「紡糸・不融化・焼成における化学結合の局所変化(大阪府立大学)」のテーマに関してさらに深く研究するために「超耐熱性炭化ケイ素繊維における局所アモルファス-微結晶構造のX線吸収端微細構造の解析を介した評価」(大阪府立大学)のテーマについて共同研究を行った。その結果、繊維内部および表面の各原子の結合状態が明らかにされた。
 
2020年度は、「炭化ケイ素繊維ならびにその複合成形体の高性能化に関する研究開発」に関連するプロジェクト研究がNEDOなどにおいて引き続き行われ始めている。特に、SiC系複合材料の実用化に際して、基礎研究も重要視されている。これらの関連として、本研究所においても以下のような研究助成が行われた。
(1)「電気誘導堆積(EPD)法により形成した窒化ホウ素界面層がSiCf/SiC複合材料の機械的特性に及ぼす影響」(東京工業大学)
(2)「真空封入法によるポリカルボシランの合成とその無機化に関する研究」(愛媛大学)
(3)「SAチラノヘックスの繊維境界の透過電子顕微鏡による解析」(大阪産業技術研究所)

本研究所では、SiC系繊維、その複合材料だけでなく、有機物、および無機物の特徴を生かしたハイブリッド材料の合成研究も今後の新しい研究命題として注目している。
したがって、以下の研究題目に関して研究助成を行った。
(4)「表面制御を行った単相ナノシートと二層ナノシートを用いたハイブリッド材料の作製とその物性評価」(早稲田大学)

上記の研究報告書を以下に添付する。

(1)「電気誘導堆積(EPD)法により形成した窒化ホウ素界面層がSiCf/SiC複合材料の機械的特性に及ぼす影響」(東京工業大学)
炭化ケイ素繊維強化炭化ケイ素基(SiCfSiC)複合材料は、優れた損傷許容性を有する高信頼性耐熱材料として、航空宇宙産業や原子力・核融合炉分野においてキーマテリアルとされている。繊維/マトリックス界面は優れた機械的特性を発現させるために極めて重要な役割を担っており、繊維表面に最適な界面層を形成し、最適な界面制御することが高性能SiCf/SiC複合材料の実現の鍵となる。本研究グループでは、これまでに高性能SiCf/SiC複合材料の創製を目指し、SiCf/SiC複合材料の強化材となるSiC繊維に対して電気泳動堆積(EPD)を用いた電気化学的手法による革新的界面層形成プロセスの開発を行っている。本研究では、SiCf/SiC複合材料の界面層物質として六方晶窒化ホウ素(h-BN)を候補材とし、電気泳動堆積(EPD)法を用いた界面層形成プロセスの確立及び高性能SiCf/SiC複合材料の界面層設計指針の導出・提案を目的とし、2020年度はBN粒子を薄片化することによって、EPD法で緻密かつ均一にBN界面層を形成し、得られたSiCf/SiC複合材料の機械的特性を評価した。
BN粒子の薄片化は湿式ジェットミル法により行った。また、EPD法において粉体を堆積させる基板は導電性を持つことが要求されるが、本研究で用いた結晶性SiC繊維(Hi-Nicalon TypeS)は低導電性であり、EPD法によるBN粒子の十分な堆積が難しいため、導電性ポリマーであるポリピロール(Ppy)を化学的酸化重合法でSiC繊維表面に被膜した。Ppyはおよそ500℃での燃焼消失が確認されており,SiCf/SiC複合材料の作製時に消失する。調製した薄片化BN粒子水系懸濁液を用いて、PpyコーティングしたSiC繊維プリフォームの繊維表面に、EPD法で薄片化BN粒子を堆積させた。BN被覆SiCプリフォームをAr雰囲気下1000℃で熱処理した後、β-SiCとポリカルボシラン(PCS)の混合物を塗布し、積層体を作製した。積層体を多目的高温炉でAr雰囲気下で1200℃まで上昇させ、保持時間1時間で焼成した。焼成体の高密度化を図るために、β-SiCとPCSを混合し得られたSiCマトリックス溶液に焼成体を浸漬し、真空含浸及び乾燥後、同様に多目的高温炉で緻密化処理を行った。含浸-緻密化処理は5回行い、4種類のSiCf/SiC複合材料を作製した(①BN界面層がないもの、②Ppyコーティングなし薄片化BN粒子で界面層を形成したもの、③Ppyコーティングあり薄片化していないBN粒子で界面層を形成したもの、④Ppyコーティングあり薄片化BN粒子で界面層を形成したもの)。条件①では、セラミックス特有の脆性的な破壊挙動を示すのに対し、条件②、③、④では擬塑性破壊挙動を示した。条件②と条件③④を比較すると、条件③④の方が繊維破断するまでの弾性変形領域が大きかった。これよりPpyコーティングによる導電性向上がEPD法におけるBN粒子の堆積を促すことが分かった。条件③と条件④を比較すると、条件④の方が擬塑性破壊挙動を顕著に示した。以上のことから、EPD法による薄片化BN粒子で形成したBN界面層が有効に機能したと考えられる。
2021年度は、EPD法によるBN界面層形成プロセスの最適化及びナノインデンターを用いた界面特性を評価し、界面特性及び微構造が複合材料の機械的特性に及ぼす影響を検討する。
(2)「真空封入法によるポリカルボシランの合成とその無機化に関する研究」(愛媛大学)
【緒言】前回の報告会で、真空引きした閉鎖容器内でポリカルボシラン(PCS)を高温焼成することにより、SiC多孔体の形成が可能であることを報告した。本手法では、気化したPCSの低分子量成分を基板上で分解・堆積することにより多孔体が形成される。SiC多孔体の生成条件(反応温度の影響)についてさらに詳しく検討するとともに、構造等について調べた。
【実験方法】 まず、PDMS粉末を石英管に真空封入し、電気炉加熱(400℃)することによりPCSを作製した。反応終了後、石英管を開封して液状のPCSを回収し、窒素雰囲気中で低温加熱を施すことにより低分子量のPCSを除去した。この固体状PCSを再び石英管に真空封入し、高温焼成(800~1400℃)した。得られた生成物については、XRD測定、XPS測定、FE-SEM観察により評価した。
【結果】 SiC多孔体の生成条件に付いて詳しく調べるため、 800~1400℃の範囲で100℃刻みで焼成温度を変えて合成を試みた。その結果、SiC多孔体は1000~1400℃の温度域で生成可能なことが判明した。また、多孔体試料のみからのX線回折(XRD)プロファイルを測定するため、1200℃・2 hの加熱条件で石英基板上にSiC多孔体を堆積・生成させXRD測定を行った。図1に測定結果を示す。図には併せて、同様の条件で焼成した石英基板のみからの回折プロファイル(バックグラウンドの測定)についても示している。b-SiCの{111}メインピークを含む2q=25~35º付近で、多孔体試料と石英基板を一緒に測定したプロファイルの方が石英基板のみを測定したものよりも強度が強くなっており、この差分がSiC多孔体からの回折プロファイルに相当する

グラフ1

また、多孔体中におけるSiとCの結合状態について調べるため、X線光電子分光(XPS)測定を行った。1200℃・2 hの条件で作製した多孔体試料のXPS測定結果を図2に示す。Siの2p電子の結合エネルギーでは、SiCに相当する結合エネルギーの領域(99.8~100.8eV)にピークが見られるのに対し、SiO2に相当する結合エネルギーの領域(103.2~103.8eV)にはピークが見られない。従って、SiはSiO2を形成することなくSiCとして存在していることが確認された。また、Cの1s電子の結合エネルギー測定結果では、炭素単体の結合エネルギーの領域(284.2~285.1eV)と炭化物の結合エネルギーの領域(280.6~283.0eV)に跨がるようにピークが見られる。このことから、多孔体中には余剰炭素が存在すると考えられる。

グラフ2

【謝辞】なお、本研究で用いたPDMSは日本曹達(株)より提供された。ここに謝意を表する。
【発表】[1]特願2020-209637「炭化ケイ素多孔体及びその製造方法」山室佐益、宮脇一

(3)「SAチラノヘックスの繊維境界の透過電子顕微鏡による解析」(大阪産業技術研究所)
○背景
SAチラノヘックス®(以降、®は省略)は、SAチラノ繊維®(同様に®は省略)の繻子織物をホットプレスすることで製造された緻密な繊維焼結型セラミックス(組成式:Si1C1.12O0.018Al0.012)であり、その焼結過程で六角形断面の微結晶SiC繊維、及びその繊維界面の境界炭素層等が形成される。緻密に焼結された繊維の微細組織構造と境界炭素層などによるSiC繊維間の強固な結合がCMCの中でも突出した熱伝導率や高い高温強度に寄与していると考えられるが、SAチラノ繊維を緻密に焼結できる条件やSiC繊維間を強固に結合する境界炭素層の形成条件、および微量に存在するAlの役割は明らかになっていない。そこで、SAチラノヘックスについて、SAチラノ繊維の緻密な焼結構造が得ることができ、さらに、強固な境界炭素層が形成されるメカニズムについて明らかにするため、透過型電子顕微鏡(TEM/STEM)を用いた繊維境界部および内部の詳細な解析を実施する。
○研究報告
SAチラノヘックスの繊維境界の詳細な解析を実施するため、当該材料の繊維境界から薄片試料を作製し、TEM/STEMによる解析を実施する。TEM/STEM観察用の薄片試料の作製については集束イオンビーム(FIB)装置を用いる。現在、境界炭素層が形成される繊維境界について詳しく調査するため、繊維方向について水平と垂直の2方向からの薄片試料の用意をFIBによって進めている(図1)。
TEM/STEMによる解析では、繊維境界の観察を明視野法、暗視野法を組み合わせることで境界炭素層の明瞭な観察を行う。図2は環状暗視野(ADF)検出器により観察されたSAチラノヘックスのADF-STEM像であり、境界炭素層や繊維内残留炭素が明瞭に観察されている。今後、STEM-EDS装置による境界炭素層での構成元素についても詳細に調査する。
写真1,2
(4)「表面制御を行った単相ナノシートと二層ナノシートを用いたハイブリッド材料の作製とその物性評価」(早稲田大学)
[背景]
ナノシートは、一原子から数原子の厚みを持つ一方、面に平行な方向ではサブミクロンからミクロンオーダーのサイズを有することから、極めて異方性の高い材料として様々な応用が試みられている。中でも、クレイ-ナイロンハイブリッド材料に代表される、高分子とナノシートの複合化によるハイブリッド材料は、これまで盛んに研究が行われてきた[1,2]。ナノシート/高分子ハイブリッド材料では、ナノシートマトリクス中での分散性、ナノシートの強度、ナノシートと高分子マトリクスの相互作用など、複数の要因が機械的性質を決めている。そこで、ナノシートの強度やナノシート表面と高分子マトリクスの相互作用がハイブリッド材料の強度に与える影響を検討することにより、ハイブリッド材料の設計に重要な指針が得られると期待できる。
一方、申請者らは層状ニオブ酸塩K4Nb6O17・3H2Oが反応性の異なる2つの層間(層間Ⅰ・層間Ⅱ)が交互に存在する特殊な構造を有することに着目し、反応性の高い層間Ⅰだけに有機アンモニウムイオンを導入し層間化合物を形成させた後、フェニルホスホン酸をグラフトさせ、これを有機溶媒中で超音波処理することにより、表面にフェニルホスホン酸基を有する二層ナノシートを作製した。一方、層間Ⅰと層間Ⅱの両方に有機アンモニウムイオンを導入した層間化合物を中間体として両方の層間でフェニルホスホン酸のグラフト反応を進行させた後剥離させると、同様の表面状態の単相ナノシートが作製できた[3]。
そこで本研究では、表面の官能基の種類と密度が同一な単相ナノシートあるいは二層ナノシートをポリマー中に分散させ、ナノシートの厚みの違いによるナノシートの強度変化がハイブリッド材料に与える影響について検討を行った。
[実験方法]
既報に従い、K4Nb6O17·3H2O の層間Ⅰのみおよび層間Ⅰ、Ⅱ両方にフェニルホスホン酸 (PPA) をグラフトし、その後アセトニトリルを分散媒とし超音波処理し遠心分離することにより、二層ナノシート (A-type)分散液および一層ナノシート (B-type)分散液を作製した[3]。そして PMMA を分散液に溶解させてキャストすることで、PMMA ハイブリッドフィルムを得た。ナノシートの添加量は、A-type は 1.6-4.8 wt%、B-type は 1.0-3.0 wt%とした。機械的強度は、引張試験機により評価した。
[結果と考察]
超音波処理の条件によりA-type 分散液から、3種類のラテラルサイズの異なるナノシート分散液を得た。ラテラルサイズは100-200 nm、800 nm-1 mm、1-2 mm となり、ナノシートの厚みは 2.7-2.8 nm となった。一方、B-type 分散液では2二種類のラテラルサイズを有するナノシート分散液を得た。ラテラルサイズは 100-200 nmと400-500 nmとなり、厚みは 2.1-2.2 nmであった。
ラテラルサイズが100-200 nmの二層ナノシートあるいは一層のナノシートを添加したハイブリッド膜の引張試験を行ったところ、弾性率は1.7-1.8 GPa、引張強度は36-49 MPa、破断ひずみは2.9-3.7 %となり、ナノシートの添加量が一番少ないフィルムでは、層数に関わらず PMMA に比べて強度が向上する傾向が認められた。しかし、添加量を増加させると、機械的強度は低下する傾向にあった。これは、ナノシートの添加量の増加に伴い、ナノシートが凝集するためだと考えられる。
[参考文献]
[1] R. K. Layek et al., Polymer, 54, 5087 2013).
[2] H. J. Salavagione et al., Macromol. Rapid Commun., 32, 1771 (2011) .
[3] N. Kimura et al., Langmuir, 30, 1169 (2014).

2.炭化ケイ素繊維ならびに複合成形体の国際標準規格設定に関する活動
炭化ケイ素繊維は世界に先駆けて日本において最初に開発され、工業製品化された正に日本発のオリジナル材料である。最近、宇宙・航空産業を中心として欧米ならびに中国において炭化ケイ素繊維への注目が急速に高まりつつあり、健全なグローバル・マーケットの形成が強く求められている。そのために、炭化ケイ素繊維の製法、構造、強度・耐熱性等の諸性質に関する規格を国際的に標準化して、公正かつ透明な競争と選択を可能にしなければならない。公益財団法人特殊無機材料研究所は、創設期からフロント・ランナーとして炭化ケイ素繊維の研究開発に深く携わっており、国際標準規格設定を主導する最適任者として広い視野に立脚して本活動を展開している。
2020年度は、ISOに提出し受理された「CMC強化繊維の試験方法:樹脂含浸ヤーンの引張特性の決定」原案がNP24046としてISO/TC206へ提案され、2019年3月22日までの間NWI投票に付された。その結果、Pメンバーの2/3に承認され、新プロジェクトとして登録された。参加するエキスパートは、フランス、ドイツ、韓国、日本の4カ国となった。規格案について2019年8月までにエキスパートからコメントがあり、それに対しては回答した。2019年10月、第26回中国済南総会で開催を予定していたWG4が中止になったため、2020年では4月及び10月の2度にわたるWG4 Web会議で詳細な議論が行われた。討議の指摘事項に基づく修正案を提出してCD投票へ移行する。

3.メソポーラスシリカならびにその複合体の国際標準化の設定
メソポーラスシリカは日本発のオリジナル材料であり、さらに近年触媒、吸着剤、バイオセンサーを中心とした産業応用と量産化がわが国で成功した。そのため、欧米、豪州、アジアでも注目が急速に高まってきたが、工業製品としての品質管理に関しては全く基準が無く、類似粗悪品等流通等により、健全なグローバル・マーケットの発展が阻害されることが懸念されている。そのため経済産業省・産業技術総合研究所のナノテクノロジー標準化国内委員会の材料規格関連/WG4では「メソポーラスシリカの国際標準化」の提案の準備を2018年度(平成30年度)から開始し、2019年度(令和1年度)のISO/TC229 WGにおいてISO/TC229に”Specifications of characteristics and measurement methods for porous silica samples with ordered nanostructured pores”として、提案の登録が認められ、2020年度(令和2年度)は引き続き活動を継続実施した。
2020年度は公益財団法人特殊無機材料研究所が主導して、ISO/TC229に仮登録された企画の具体案をアメリカにおける5月のInternational Meeting(WEB Meeting)における議論で指摘された内容を修正のうえ7月に再提出し、正式提案として認められた。さらにこの提案はフランス、ドイツ、イラン、日本、ポルトガル、ロシア、アメリカの7カ国がエキスパート登録を表明し、最低3カ国以上が登録して正式提案として最終的に委員会に認められた。この修正案を11月のイギリスの会議に提出し議論を行った結果、この提案はNew Work Item Projectとして正式受理された。

4.研究会等の開催による成果公開、情報交換そして研究促進
(1)セミナーAIMS-2019
下記の内容にて開催予定であったが、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大に伴い緊急事態宣言が発出されたことから、開催を中止とした。
開催日時:2020年5月20日(月)14:30-16:00
開催場所:東京工業大学キャンパス・イノベーションセンター内会議室
講演題目:「セラミックスの原子力分野への適用可能性と課題―研究を振り返りつつ―」
講  師:矢野 豊彦(東京工業大学名誉教授/科学技術創成研究院先導原子力研究所)

(2)高信頼性・高耐熱先進材料講演会
(公益財団法人特殊無機材料研究所・株式会社超高温材料研究センター共催)
開催日時:2020年10月22日(木)13:20-16:30
開催場所:株式会社超高温材料研究センター山口事業所(山口県宇部市沖宇部573番地3)
※本講演会は新型コロナウイルス感染予防対策を実施した上で、現地開催及びWEB配信(Microsoft Teamsを使用)を併用する形で開催した。なお、本講演会については本法人及び共催企業の両HPに掲載。
参 加 者:講師(3名)、出席者(17名)、WEB配信参加者(7名)
講演題目:「セラミックスの原子力分野への適用可能性と課題―研究を振り返りつつ―」
講  師:矢野 豊彦(東京工業大学科学技術創成研究院先導原子力研究所 名誉教授)
講演題目:「白色LED用蛍光体の現状と動向について」
講  師:大塚 礼治(三菱ケミカル株式会社新エネルギー部門
エネルギー変換デバイス部材本部LEDマテリアルズ事業部
ファスファー技術開発センター グループマネージャー)
講演題目:「赤外線システムに搭載する検知素子と光学材料の技術動向」
講  師:佐野 雅彦(日本電気株式会社社会基盤ビジネスユニット
電波・誘導事業部誘導光波システム部 シニアエキスパート)

5.理事会
第1回理事会(決議の省略の方法による)
決議があったものとみなされた日:2020年4月30日
理事総数3名、監事総数2名 全員の同意
<議事>
・2019年度事業報告、決算報告及び監査報告承認の件
1)2019年度事業報告の承認の件
2)2019年度決算報告の承認の件
3)2019年度監査報告の承認の件
・決議の省略の方法による評議員会を招集する件
・2020年度事業計画書、予算案の提出の件

第2回理事会 2020年9月4日(金)13:00-15:00
ZoomによるWEB会議及び対面会議の併用にて開催
対面会議室:株式会社超高温材料研究センター山口事業所
<議事>
・2020年度研究事業:研究助成金の支払い(4件)の承認
・次年度の研究助成についての審議ならびに承認
・今期役員の任期満了に伴う次期役員の選任についての審議ならびに承認
・第3回理事会、臨時評議員会(10月23(金)予定)の開催について
・「高信頼性・高耐熱先進材料」講演会(10月22日予定)開催について
・定時評議員会に関わる書類作成の完了報告
・内閣府への書類の電子申請についての報告
・炭化ケイ素繊維高度化プロジェクト報告書の印刷についての進捗報告
・株式会社超高温材料研究センターとの研究員室賃貸借契約の継続について報告
・特殊無機材料研究所HPについて報告
・元評議員選定委員会(外部委員)逝去の報告

第3回理事会 2020年10月23日(金)10:00-12:15
ZoomによるWEB会議及び対面会議の併用にて開催
対面会議室:株式会社超高温材料研究センター山口事業所
<議事>
・役員(理事)の任期満了に伴う次期役員人事について審議ならびに承認
・次年度(2021年度)事務所及び定款変更について審議ならびに承認
・2021年度の研究助成金支給者の選定ならびに承認
・臨時評議員会の議事について承認
・特殊無機材料研究所HPの障害について報告
・学振124委員会について報告
・炭化ケイ素繊維ならびに複合成形体の国際標準規格設定に関する活動報告
・ファインセラミックス国際標準化推進協議会解散及びファインセラミックス協会への業務統合に関する報告
・メソポーラスシリカの標準規格設定に関する報告
・第4回理事会の開催及び2021年度定時評議員会開催について
・セミナーAIMS-2021の講師依頼についての報告

第4回理事会(決議の省略の方法による)
決議があったものとみなされた日:2021年3月15日
理事総数3名、監事総数2名 全員の同意
<議事>
・2021年度事業計画書案及び当初予算案承認の件
・2020年度事業報告書案承認の件
・2020年度決算報告書案承認の件
・決議の省略の方法による定時評議員会を招集する件
・事務所移転に関する賃貸借契約について
・澁谷 昌樹氏の採用に伴う就業規則の作成について
・評議員選定委員の選任について
・研究開発高度化資金の取り崩しについて
・設備投資及び資金調達について

6.評議員会
(1)定時評議員会(決議の省略の方法による)
決議があったものとみなされた日:2020年5月28日
評議員総数6名、理事総数3名、監事総数2名 全員の同意
<議事>
(決議事項)
・(公財)特殊無機材料研究所の2019年度決算についての承認の件
(報告事項)
・(公財)特殊無機材料研究所の2019年度事業報告・監査報告について
1)2019年度事業報告について
2)2019年度監査報告について
・(公財)特殊無機材料研究所の2020年度事業計画及び当初予算について
1)2020年度事業計画
2)2020年度当初予算

(2)臨時評議員会 2020年10月23日(金)13:00-14:30
Microsoft TeamsによるWEB会議及び対面会議の併用にて開催
対面会議室:株式会社超高温材料研究センター山口事業所
<議事>
・次期理事候補者の選任について審議及び承認
・定款第2条(事務所)の変更について審議及び承認
・2021年度研究助成について審議及び承認
・特殊無機材料研究所HPに関する報告
・学振124委員会について報告
・炭化ケイ素繊維ならびに複合成形体の国際標準規格設定に関する活動報告
・2021年度定時評議員会開催に関する報告
・セミナーAIMS-2021の講師依頼についての報告

7.将来計画審議委員会 2020年10月23日(金)14:30-15:30
Microsoft TeamsによるWEB会議及び対面会議の併用にて開催
対面会議室:株式会社超高温材料研究センター山口事業所
<議事>
・次年度以降の事業及び人事について

8.事業報告の附属明細書
2020年度事業報告には、事業報告の内容を補足する重要な事項が存在しないため、附属明細書を作成しない。

以上