2024年度事業報告書
公益財団法人特殊無機材料研究所(AIMS)は、有機-無機変換による特殊無機材料の開発に関する以下のような研究・調査を行い、あわせてこれらに関する研究を助成し、特殊無機材料の学術の発展に寄与することを目的としている。
1)炭化ケイ素繊維および関連する特殊無機材料の耐熱性などの物性の高性能化に関する研究開発
2)炭化ケイ素繊維および関連する特殊無機材料の構造や物性に関する研究開発
3)炭化ケイ素繊維および関連する特殊無機材料の新たな用途に関する研究開発
4)新規耐熱材料の研究開発
5)研究会等の開催による成果公開、情報交換、研究促進
6)その他(定款第4条に規定する事業)
2024年度は以下のような公益目的事業を行った。それぞれの内容について報告する。
1)研究助成
①SiC繊維強化Si-Co基複合材料の開発
東京農工大学大学院工学研究院先端機械システム部門 小笠原 俊夫
本研究では600~1000 ℃で使用可能なSiC繊維/シリサイド複合材料(比重4 g/cc以下、曲げ強度400 MPa以上(比強度100以上)を創製するとともに、高温酸化挙動および高温強度発現のメカニズムを材料科学および微視力学の視点から解明することを目的とする。
基本的な製造プロセスは、溶融したSi-Co合金をSiC織物に含浸してマトリクスとする「溶融含浸法」である。材料設計上の重要な課題は、① Si-Co合金によるSiC繊維への浸食(反応)防止と、② SiC繊維による強化機構を発現するための繊維/母材界面の設計である。繊維/マトリクス界面層としては、化学気相浸透法(CVI法)と比較して低温・短時間で炭素層を形成することが可能な「膜沸騰法(FB法)」を適用した。強化繊維は非晶質SiC繊維であるHi-Nicalonとした。Hi-Nicalonの三次元織物に対して1100 ℃でFB-C処理を行って繊維表面に数μm程度のCを形成した後、開気孔にSi-22 at.% Co合金を1380 ℃で溶融含浸してSiC-f/Si-Co合金複合材料を作製した。またSi-Co合金を主とする耐酸化コーティングをSiC-f/Si-Co合金複合材料の表面に形成し、高温大気中での強度評価も実施した。
その結果、SiC-f/Si-Co合金複合材料の4点曲げ強度は、室温460 MPa、800 ℃(Ar中)612 MPa、800 ℃(大気中)424 MPa、1200 ℃(大気中)539 MPaであった。損傷進展・破壊挙動は擬似延性的であり、破壊後の破面には顕著な繊維引き抜けが観察されたことから、FB-C層はSi合金による繊維への浸食を抑制し、繊維/マトリクス間の界面力学特性の良好な制御に寄与していることがわかった。また、Si-Co合金からなる耐酸化コーティングが高温大気中での強度発現において効果的に機能することも確認された。
②直流パルス電気泳動堆積(EPD)法によるSiCf/SiC複合材料の界面層形成プロセスの高度化
東京科学大学総合研究院ゼロカーボンエネルギー研究所 吉田 克己
航空宇宙分野や原子力・核融合分野等において高信頼性耐熱材料として期待されている炭化ケイ素繊維強化炭化ケイ素基(SiCf/SiC)複合材料では、繊維表面に最適な界面層を形成し、最適な界面制御することが高性能複合材料の実現の鍵となる。これまでに本研究グループでは、電気泳動堆積(EPD)を用いた革新的界面層形成プロセスの開発を行っており、EPD法による界面層形成プロセスの有効性を世界に先駆けて明らかにしている。EPDに用いる懸濁液の分散媒として、懸濁液の安定性および調製のしやすさ、低コスト、低環境負荷の観点から水を用いているが、EPD電圧を高くすると水の電気分解による気泡の発生による界面層の膜質や膜密度に影響を及ぼす可能性があるため、EPDプロセスの最適化および高度化を図る必要がある。本研究では、直流パルス電場に着目し、直流パルスEPD法を用いたSiCf/SiC複合材料の界面層形成プロセスの高度化を目的とした。また、直流パルスEPD法により界面層を形成したSiC繊維を強化材としたSiCf/SiC複合材料を作製し、得られた複合材料の機械的特性を評価した。
0.5 wt% BN水系懸濁液を調製し、連続および直流パルス電圧(5、10および20 V)を印加し、EPDによりSiC繊維表面にBN層を被覆した。電圧印加開始から終了までの時間を1分間とし、パルスのON/OFF時間比は1 ms/10 msとした。同じ印加電圧の場合、連続および直流パルス電圧のどちらにおいてもほぼ同等の厚さのBN層が形成され、印加電圧5、10および20 VでEPDを行った場合、それぞれ150、270および340 nmの膜厚となった。直流パルスEPDにより、高電圧印加条件において水の電気分解による気泡の生成を抑制することができ、高電圧、短時間の直流EPDでBN層を形成できることを明らかにした。また、直流パルスEPD法により界面層を形成したSiC繊維を強化材とした一次元SiCf/SiC複合材料をポリマー溶液含浸-熱分解(PIP)法により作製し、得られた複合材料の機械的特性を評価したところ、擬塑性破壊挙動を示したことから、本プロセスの有効性を明らかにした。
2)学会発表、総説、実用新案
学会発表
久新荘一郎,基礎化学者が行う最先端材料開発,近畿化学協会有機金属部会2024年度第2回例会,東京理科大学森戸記念館,東京,2024年6月24日(依頼講演).
久新荘一郎,ポリ(ジメチルシリレン)から炭化ケイ素への反応解析,第87回有機合成化学協会関東支部シンポジウム,前橋市中央公民館,前橋,2024年11月30日(特別講演).
総説
澁谷昌樹,田渕直人,田渕義也,阿部浩典,炭化けい素系多孔質部材による加熱炉の省エネルギー化,工業加熱 2024, 61, 15–19.
実用新案
渋谷昌樹,加熱装置,登録第3246632号,令和6年4月30日登録.
3)特殊無機材料研究所講演会
主催:特殊無機材料研究所
協賛:日本化学会、日本セラミックス協会、粉体粉末冶金協会
分野:炭化ケイ素繊維および関連する耐熱材料の研究開発
日時:2024年12月18日(水)
場所:学士会館3階302号室(東京都千代田区神田錦町3-28)
プログラム
14:00~14:05 開会の挨拶
14:05~14:45
小谷 政規(宇宙航空研究開発機構(JAXA))
「セラミックス基複合材料(CMC)の航空エンジンへの更なる適用に向けた研究開発」
14:45~15:25
舩津 賢人(群馬大学大学院理工学府)
「プラズマジェットを利用した耐熱材料の加熱試験とその光学計測」
15:25~15:50 休憩
15:50~16:50
吉見 享祐(東北大学大学院工学研究科)
「モシブチック合金の研究開発とマテリアルズ・インフォマティクス」
16:50~17:10
澁谷 昌樹(新潟ファーネス工業株式会社)
「炭化ケイ素系多孔質部材による加熱炉の省エネルギー化」
17:10~17:15 閉会の挨拶