公益財団法人特殊無機材料研究所

2024年度事業計画

(2024年4月1日―2025年3月31日)

 

公益財団法人特殊無機材料研究所は炭化ケイ素繊維と関連する特殊無機材料の研究開発の発展に寄与するために、2024年度は以下の公益目的事業を実施する。

1) 炭化ケイ素繊維とその複合材料の高性能化に関する研究開発
2) 炭化ケイ素繊維とその複合材料の構造や物性に関する研究開発
3) 炭化ケイ素繊維とその複合材料の新たな用途に関する研究開発
4) 炭化ケイ素繊維とその複合材料に代わる新たな耐熱材料の研究開発
5) 研究会等の開催による成果公開、情報交換、研究促進
6) その他(定款第4条に規定する事業)

1) 炭化ケイ素繊維とその複合材料の高性能化に関する研究開発
 炭化ケイ素繊維とその複合材料の高性能化については、開発以来、研究を進めてきた。例えば、ポリカルボシラン繊維の不融化法として、当初は熱酸化不融化を行ったが、酸素含有量を減らすために電子線不融化に改善した。最近ではさらに酸素含有量を減らすことを目的として、無酸素ポリ(ジメチルシリレン)の合成を報告した。しかし炭化ケイ素繊維とその複合材料には依然として課題が多い。コストが非常に高いこと、ポリカルボシラン繊維は非常にもろいこと、セラミックス基複合材料(CMC)用マトリクスとしてStarfire Systems製のAHPCSが市場で得られる唯一のマトリクスであり、代替品がないことなど、多数の課題がある。これを改善、解決するための研究を本研究所および公募研究で進める予定である。

2) 炭化ケイ素繊維とその複合材料の構造や物性に関する研究開発
 炭化ケイ素繊維とその複合材料の構造や物性に関する研究開発は炭化ケイ素繊維の開発以来、行われてきたテーマである。当研究所では、繊維の破断メカニズムの解析や機械的強度の評価方法の改善、加熱による結晶相やナノ構造体の成長と物性の変化など、構造や物性に関する研究を行ってきた。このような研究をさらに発展させるために、公募研究を行う予定である。

3) 炭化ケイ素繊維とその複合材料の新たな用途に関する研究開発
炭化ケイ素繊維とその複合材料は次世代航空機ジェットエンジンの基幹高温部材として注目を集めている。炭化ケイ素系ジェットエンジンを搭載した旅客機は国内外で既に就航しており、これはこれまでの不断の努力が実ったものである。しかし炭化ケイ素の用途は航空機エンジンに限らない。例えば、炭化ケイ素は次世代パワー半導体としての研究開発が行われている。また、炭化ケイ素の需要が今後、大幅に増えるためには、日常の生活用品として使用する材料となることが必要である。そのためにはコストの削減など、大きな問題があるが、将来、どのような用途で使用できるのか、その第一歩を踏み出す基礎的な研究開発が必要である。公募で出てきた種々のアイデアを検討しながら研究を進める予定である。

4) 炭化ケイ素繊維とその複合材料に代わる新たな耐熱材料の研究開発
 炭化ケイ素繊維とその複合材料は成功を収めてきたが、さらに物性を向上させた材料の開発が国際的に進められている。我が国は炭化ケイ素繊維とその複合材料の研究開発について、これまで国際的にリードしてきたが、今後もそれを維持し、さらに発展させるためには、新たな耐熱性材料の研究開発を進める必要がある。そのための研究を本研究所および公募研究で進める予定である。

5) 研究会等の開催による成果公開、情報交換、研究促進
 本研究所では5月に開催する定時評議員会のときに、特殊無機材料に関連した分野の研究者を招いて講演会を行ってきた。また11月頃に研究助成者の研究発表会を行い、そのときにも外部の研究者を招いて講演会を行ってきた。これらの講演会や研究発表会はこの分野の研究者のよい情報交換の場になっている。今年度も5月の定時評議員会・講演会と11月頃に研究発表会・講演会を開催する予定である。

6) その他(定款第4条に規定する事業)
 以上の事業の他に、定款第4条に規定する事業を必要に応じて実施する予定である。

定款
第4条 この法人は、前条の目的を達成するため、次の事業を行う。
(1)特殊無機材料及びその応用に関する研究並びに調査
(2)特殊無機材料及びその応用に関する研究用材料の製造並びに供給
(3)特殊無機材料及びその応用に関する研究の助成
(4)その他この法人の目的を達成するために必要な事業